住宅を購入するタイミングは年齢、家族、仕事など、購入のタイミングは人それぞれです。
しかし、外的な要因で購入のタイミングを決めることも重要です。そのひとつに住宅ローンの金利があります。住宅という買い物は金額が大きいので、わずかな金利の違いでも、大きな節約になる可能性があります。
住宅購入のタイミングと、住宅ローン金利の関係について紹介します。
さまざまな要素から検討する住宅購入のタイミング
多くの人はどのようなタイミングで住宅購入を検討しているのでしょうか。
年齢
国土交通省の「令和2年度住宅市場動向調査報告書」によると、住宅購入の一次取得者(初めて住宅を取得した世帯)の平均年齢は40歳前後です。これは、住宅ローンの完済年齢が大きく関係していると考えられます。
国土交通省の「令和2年度住宅市場動向調査報告書」より
住宅ローンの返済期間は最長で35年です。そして、多くの金融機関が完済時の年齢を80歳未満に設定しています。返済期間が長くなるほど、月々の返済金額は少なくなります。そういった狙いから35年ローンを利用しようとすると、遅くとも45歳までには住宅ローンを利用開始する必要があります。
子供
子供が生まれる前後のタイミングで、住宅購入を検討する人も多くいます。理想の子育て環境を求めて移り住む人や、子供にいつでも戻ってこられる故郷を作ってあげたいと考える人も少なくありません。
子供が小学生に上がるタイミングというのも挙げられます。小学生以降の引っ越しでは転校しなければいけなかったり、環境が変わったりして、子供にも負担がかかってしまいます。
子供が自立して、部屋が余ってしまったときも購入タイミングです。その場合は老後生活を視野に入れた物件選びになります。
仕事
昇給や昇格によって金銭面に余裕が出たときも、住宅購入のタイミングです。年収が上がると住宅ローンの審査も通りやすくなりますし、より条件のよい住宅ローンを利用できるようになります。
転勤の心配がなくなって定住したくなったときや、社宅の期限が切れたときも、購入タイミングです。賃貸と購入を比較して、月々の支払い金額が同じくらいなら購入しようと考える人も多くいます。
新型コロナウイルスの影響は?
住宅の購入タイミングには社会情勢も重要です。新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが普及したことにより、今までとは違った暮らしのニーズが生まれました。
立地や通勤がメインという考えから、住みやすい環境を重視する人が増えています。ワークスペースを求めたり、空調システムに力を入れる人も増えています。
しかし、コロナ禍で海外からの供給停止や工場の稼働停止などによって、住宅に必要な資材が不足したことによる納期遅れや資材価格の高騰が起きています。
その中でも2021年に本格化した木工建築資材の高騰は「ウッドショック」と呼ばれて、木造住宅建築に大きな影響を与えました。建築資材メーカーの神谷コーポレーションの「ウッドショックの影響についてアンケート」によるとウ ッドショック前には、約9割が⾒積りから3カ月以内に注⽂に至ったそうですが、ウッドショック後では、4割を割るほど減少しています。資材高騰に伴う、買い控えが起きたとみて、間違いないでしょう。
コロナ禍は今後も続くと見られ、こうした影響が想定しない形で現れるかもしれません。
神谷コーポレーション「ウッドショックの影響についてアンケート」より
住宅ローンの金利状況
住宅ローンを利用して住宅購入する場合、金利は重要な検討材料です。金利が0.1%違うだけで、支払金額は数十万円の差が出ることがあります。
現在は、超低金利時代なので、住宅ローンを利用しても利子の支払いが少なく、支払金額を抑えられます。しかし、アメリカでは2022年の利上げを検討しており、(東洋経済オンライン アメリカのインフレ率が鈍化するこれだけの証拠 2022年2月25日)日本でも利上げが実行される可能性があります。
固定金利は国債の利回り、つまり市場に連動します。一方で変動金利は日銀の方針で決まります。
最初に影響を受けるのは固定金利なので固定金利を検討している人は、低金利時代にローン利用を開始することが、支払金額を減らす手段となります。
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住宅ローン金利から見る住宅購入のタイミング
住宅ローン金利は住宅購入タイミングの大きな要因です。そこで、住宅ローンの金利がどのくらい住宅購入に重要かについて紹介します。
現在は超低金利時代
住宅金融支援機構が公表している「民間金融機関の住宅ローン金利推移」によると、1991年のバブルがはじけて以来、住宅ローンは超低金利時代が続いています。
住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移」より
2016年1月にはマイナス金利が導入され、固定金利が一段と低金利になりました。しかし、細かく見てみると、固定金利期間選択型の金利は徐々に上がってきているように見えます。マイナス金利は異常な状態ですので、今後いつ解除されるかわかりません。
金利が1%上がった場合との比較
金利が1%上がるとどのような影響があるか具体的に計算してみましょう。
現在、変動金利はほとんどの金融機関で0.5%以下です。そこで、金利が0.5%と1.5%では毎月返済額と総返済額がどのくらい変わってくるか比較します。なお、元利均等、返済期間35年で計算しています。
借入額 | 金利0.5% | 金利1.5% | ||
---|---|---|---|---|
毎月返済額 | 総返済額 | 毎月返済額 | 総返済額 | |
2,000万円 | 約5.2万円 | 約2,181万円 | 約6.2万円 | 約2,572万円 |
3,000万円 | 約7.8万円 | 約3,271万円 | 約9.2万円 | 約3,858万円 |
5,000万円 | 約13万円 | 約5,452万円 | 約15.4万円 | 約6,430万円 |
この表からわかる通り、金利が1%上がった場合、支払金額は18%近く上昇します。この結果から、金利の1%上昇がどれほど大きいかが理解できます。
金利が変わらないが、5年後に住宅購入した場合との比較
利子をなるべく払いたくないので、頭金を貯めてから住宅を購入しようと考える人もいます。そこで、①5,000万円の住宅を35年フルローン(頭金なし)で借りた場合と、②住宅を購入する前に、5年にわたって毎月10万円貯金(別途、家賃を10万円払う)をして頭金にした場合について比較します。金利は0.5%で40年間変わらないものとします。
全額ローン利用 | 5年間頭金を貯金後ローン利用 | ||
---|---|---|---|
ローン返済年額 | 家賃年額 | 頭金+ローン返済年額 | |
1~5年目 | 約156万円 | 約120万円 | 約120万円 |
6~35年目 | 約156万円 | 0 | 約138万円 |
36~40年目 | 0 | 0 | 約138万円 |
合計 | 約5,460万円 | 約600万円 | 約5,430万円 |
フルローンを利用した場合は、毎月約13万円の返済をするので、1年で約156万円を返済します。金利が変わらなければ、35年間同額を払い続け、合計で約5,460万円の支払いです。
5年間頭金を貯金した場合は、毎月10万円の家賃を払うので、年120万円の支払いが必要です。さらに、毎月10万円の貯金をして頭金にするので、年120万円の支出とします。
5年間で合計600万円の頭金ができますので、6年目から4,400万円を35年かけて返済していきます。この場合、毎月の返済額は約11.5万円なので、1年で約138万円を返済していきます。
6年目~40年目まで、毎年約138万円を払い続けるので、約4,830万円の支払いになります。頭金の600万円と合わせると、5,430万円の支出です。
つまり、600万円の頭金があると、合計で30万円支払額が減ることがわかります。しかし、頭金を貯める5年間で600万円の家賃支出があります。よって、トータルではフルローンで住宅を購入した方が約570万円も少ない支出です。
このように、低金利時代では、頭金を貯めるよりフルローンで借りてしまった方が支出は少なくなります。このような理由から、現在はフルローンの利用が多くなっています。
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2021年の住宅ローン利用者から見えてくること
最後に、2021年に住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用者の実態調査」のデータから見えてくる住宅購入について紹介します。
変動金利の割合が増えている
2021年4月の調査では変動金利を利用する人が68%を超えており、年々割合が増加しています。その理由はやはり低金利だからでしょう。変動金利は固定金利と比べて、金利が半分以下です。
住宅金融支援機構 「住宅ローン利用者の実態調査」より
変動金利はこれから金利が上がるリスクがある代わりに、契約時の金利が低くなっています。そして、変動金利には返済期間中の急激な負担増を防ぐために「5年ルール」と「1.25倍ルール」というものがあります。
5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は返済額が変わらないというルールです。そして、1.25倍ルールとは、返済額が変更されても前回の1.25倍までしか増えないというルールです。つまり、どれだけ金利が上昇したとしても、毎月の返済額は5年間で1.25倍までしか増えないということです。
そのため、返済額が急激に増えたことによって返済ができなくなるといったことが起きにくくなっています。
融資率は9割超えがほとんど
融資率は変動金利、固定金利ともに9割越えの割合が一番多くなっています。つまり、頭金が1割未満の人が最も多いということです。これは、現在の金利が低いために、融資を受けてでも早く住宅を購入した方が得だと考えている人が多いからです。
住宅金融支援機構 「住宅ローン利用者の実態調査」より
今後金利が上昇すると予想する割合が増えている
今後1年間で住宅ローンの金利がどうなると思うかを調査したところ、2020年の調査結果に比べて「現状より低下する」は減少し、「現状より上昇する」が増加しました。
住宅金融支援機構 「住宅ローン利用者の実態調査」より
現状の金利がとても低いため、これ以上は下がらないだろうと思っている人が多いようです。住宅ローン金利が安いときに借りることで、月々の支払いが減り、総返済額が何百万円も安くなる可能性があります。
金利だけを見るならば、今が住宅購入を検討する絶好のタイミングであることは間違いないでしょう。
住宅の購入は金利の知識のほかにさまざまな知識が必要になるため、購入を検討する際は専門家に相談することをおすすめします。
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